労働時間の削減は何から始めますか?

IT業界専門の人事コンサルタント、特定社会保険労務士の小林裕幸です。

数か月前のことになります。

訪問先の部長さんがこのようなことをおっしゃっていました。

「当社も、夜10時になると一斉にオフィスの電気を消すようにしました。」

社会保険労務士の業務とは全く関係のない案件での訪問だったし、
人事担当の部長さんでもありませんでしたが、
私の名刺をみての発言でした。

電通が過重な時間外労働をなくすため、
「強制的に夜10時に一斉消灯している」といったようなことが、
メディアで取り上げられていた時期があり、
深夜残業の多かった訪問先の会社の経営者が「わが社でも同様に・・・」
といった指示をされたようです。

私の考えとしては、こういった対応はお勧めできません。

この部長さんの会社や電通で労働時間の削減に効果があったかどうかまではわかりませんが、
これまで私が見聞きしてきた、一般的な傾向として、
一斉消灯のような強制的に業務を切り上げさせるような対応をとったときに、
どのようなことが起こるかを申し上げます。

①暗闇の中で、パソコンの画面の明かりを頼りに仕事を続行

②早出残業の増加

③会社の近くのカフェで仕事

④自宅に持ち帰っての残業

など
要するにサービス残業の増加です。

 

①と②の例であれば、残業の事実を客観的に把握することは可能です。

③と④の場合は、問題の所在を隠してしまい、深刻な事態を招くこともあります。

 

そもそも、
何らかの問題を解決する手順は、

①問題の特定

②原因の追究

③解決策を立案

④計画の実行

といった流れが基本です。

 

 

問題の所在が特定されず、原因もはっきりしないのに、
安易な解決策を強要しても本質的な解決にはなりません。

一斉消灯が有効なのは、
「従業員がだらだら残業する風潮がある」とか、
「ある程度の労働時間の削減が進み、あともう少し生産性を向上させる努力を促したい」
といったような場合ではないでしょうか?

業務量過多で、毎月100時間を超える残業をやむを得ず行っているような労働環境で、
いきなり残業は月45時間まで、以降は会社には残るなと言ったって、

顧客からは容赦なく催促はくるし、上司からはどんどん仕事が振られてくる。

持ち帰り残業でもしなければとても追いつかず、残業手当も出ない。

これまで以上にストレスを抱えることになり、

心も身体も疲弊していきます。

 

じゃあ、どうすればいいの?
と聞かれたら、

私がお勧めしているのは、
まず「職務調査」です。

一般的には「職務調査」または「職務分析」と呼ばれることもあり、
混同して使われていることが多いようです。

私の場合は、現状を把握することを目的にする際には「職務調査」とし、
将来のあるべき姿を明確にしたものを「職務分析」と呼んで、区別しています。

「職務調査」とか「職務分析」というのは人事評価制度の構築段階で使われる手法ですが、
私は業務改善全般でも有効だと考えています。

今の仕事の流れ、どのぐらいの時間を要しているか、どのような能力を発揮しているかを「職務調査」で明確にします。

そして、会社の経営理念、経営目標にそって業務を見直し、
「職務分析」で、管理職や一般職の役割を明確化し、
あるべき状態の、仕事の流れ、遂行するために必要な能力、標準時間を検討します。

あるべき姿を設定せず、求められる役割・能力が明確でないままに、
従業員の自己啓発や研修に力を入れている会社もあります。

決して無駄とは言いませんし、職場の状態によっては、
私自身が講師となって、コミュニケーション研修などを推奨することもあります。

しかしながら、繰り返しになりますが、

「問題の所在が特定されず、原因もはっきりしないままの解決策」は、
「労多くして功少なし」なのです。

安易な解決策は、結局、時間とコストの浪費で終わることが多いのです。

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