パワハラ問題とどう向き合いますか?

経営者あるいは人事労務の担当者様

職場でパワハラが発覚した場合、どのような対応をされていますか?

まだ経験がないという方は、想像してみてください。

 例えば、創立して5年ほど。

事業も軌道にのり、従業員も増えてきた。

 

気になるのは、A部長が率いるWEB開発部門で、なかなか人材が育ってこないこと。

新しく入社した新人がなかなか居つかず、すぐに退職してしまう。

 

そんなある日、社長であるあなたは目撃してしまうのです。

A部長が、自分の部下B君に対して、すごい剣幕で怒鳴っています。

いったい、何があったのか?

 

怒鳴られたB君は言います。

「A部長は、とにかく私がすること、なすこと全て気に入らず、攻撃してきます」

A部長は言います。

「私はそんなことはしていない。何かというと、いいつけに逆らうのはB君の方です。
社長はいったい、どっちのいうことを信じるのか?」

 

ここから先の行動は経営者により、まちまちです。

 

まずはX社の事例

社長のC氏は考えます。

「A部長は、部下への指導に関して、多少の行き過ぎはあるけれども、これまで実績があり、職務能力は高い。部下に対しての言葉使いなどを注意しておこう。」

「B君もそれで納得するだろう。」

 

それからしばらくして、B君は体調不良で仕事を休みがちになり、とうとうまったく出社してこなくなります。

B君からは休職願いとともに、医師の診断書が提出され「うつ症状により3カ月程度の休養を要す」と書かれていました。

 

最初は事態をあまくみていたC社長も、B君が「労災申請」さらには労働局に「あっせん」の相談をしていると聞いて驚いてしまいます。

A部長やB君の周囲からヒアリングしたところ、A部長がこれまでも日常的にパワハラを繰り返していたことは間違いなさそうです。

これまで監督署や労働局に指導や是正勧告されたことのないC社長は「あっせん」ということがどのようなことかわかりません。

 

慌てたC社長はB君に面会を申し出ます。

「病院の治療費のうち自己負担分や休業中の賃金の相当する額を上回る金品を渡そう。労災申請や労働局に行くのはちょっと待ってくれないか?」

「所属もA部長とは接点のない部署に異動させてあげよう」

「会社と争って転職といっても、条件のあう会社はなかなか見つからないだろう」

と説得し、なかば強引に騒動を収めてしまいます。

 

ただし、A部長もさすがやりすぎたと思ったか、その後は部下に対する姿勢も若干柔らかくなったとか・・・

 

つぎは、Y社の事例

社長はDさんとします。

A部長から

「私はそんなことはしていない。何かというと、いいつけに逆らうのはB君の方です。社長はいったい、どっちのいうことを信じるのか?」

と言われたところまではX社と同じです。

 

D社長は、これまでA部長の部署の離職率が高いことや、これまではっきりした理由がわからないまま辞めていった社員のことなど、日ごろから気になっていることがありました。

「そういえば、顧問の社労士がパワハラとか、セクハラとかといったことについて話していたことがあったな。ちょっと相談してみるか」

 

社労士「これまでに辞めた社員さんも、A部長のパワハラが原因ではないかとお考えになってるんでしたよね?」

D社長「はい、実は先生にご連絡した後、これまでの辞めた社員の発言や、今残っている社員の言動を振り返ってみて、間違いないと思います。」

社労士「なぜそう思われたのか、これまでの経緯をお聞かせください。確証がなければA部長の尊厳を傷つけてしまい、取り返しがつかないことになりますよ。」

 

D社長は、これまで辞めていった社員の一人一人の言動や、当時の様子を社労士に話していきます。

D社長「今思うと、社員からはいろいろなSOSが出ていたんですよね…。」

さらに「今いる社員も、A部長がこれまで会社に貢献してきた功労者であることや、私と古い付き合いがあるので、私に対しても悩みを打ち明けられなかったようです。」

 

社労士「そうですか。」「ところで、A部長と元従業員との間で争いがあったとき、D社長はどのようなお気持ちでしたか?」

D社長「正直、面倒だな…、勝手にしろって!」

社労士「つまり?」

D社長「逃げていたかも…!」

社労士「言いにくいことを、よくおっしゃってくださいました。今はどのようにお考えですか?」

D社長「二度とパワハラが原因で辞めていく社員を出したくないんです。こういうことが理由で辞めることは認められない。」

社労士「今のお言葉を、ぜひ従業員に向けておっしゃってください。」

さらに社労士「責任の所在をA部長にだけ押しつけて終わりにしてはいけません。職場全体でハラスメントについて考える良い機会です。」

「再発防止のため、全従業員を対象に研修の実施も検討しましょう。」

 

その後、D社長は従業員とじっくり話し合いの時間を持ち、これまで以上に信頼形成を強化されたようです。

気になるA部長には、D社長が、これまでの事実関係を双方で確認しあいました。

社労士のアドバイスに従い、就業規則の服務規定やハラスメント規定に違反する行為があれば懲戒の可能性があることもあらためて説明し、納得を得られました。

実は、D部長も家庭で悩みを抱えており、そのストレスがいらいらとなって、社員への八つ当たりになっていたことも社長との話し合いの場で明らかになるのです。

 

 さて、X社とY社の事例をご紹介しました。

「Y社の社長はすばらしいけれど、X社はまずいんじゃないか」といったような、どちらが正しいかといったことではありません。

結果的には、X社もY社も丸く収まっています。

 

X社は時間をかけず、即時に対応されました。

Y社も社長や会社の成長の機会にはなったかもしれませんが、話し合いに時間がかかり、場合によって新たなトラブルが露わになる可能性があります。

例えば、「A部長の造反」や「ハラスメント以外の従業員の不満が一気に噴出する」など、短い文章では表せないリスクを内在しています。

 

それに、二つの事例だけではなく、10の職場があれば10通りの対応があり、どちらかといった二者択一では対応はできません。

似たようなことがあった場合に、どうするかと考える材料にしていただければありがたいです。

 

最後に、X社もY社も私が勝手に創作した事例であり、現実には存在しません。

念のため、申し添えておきます。

 

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